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知人の小説を読む / 発言者:tmiyazaki

   いだき受講生でもある知人の小説をやっと読む機会を得た。もともと詩を書く人であったが、英語の先生をしながら、大阪の文学学校に通い、勉強されている女性である。『夕焼けの音』という短編作品は、なにかの文学賞に応募したのだが落選したよしで、「ぜひ読んでみてほしい」と言われていたのである。いま、島田文六という人の『失権』(神戸を舞台にした会社経営者の自伝)を読んでいて、どうしても比較してしまうのであるが、知人女性の方がずっと文章がうまく、表現力の高さに舌を巻いた次第。耳が聞こえない老婦人の手話介護をする中年女性が語る物語で、「鐘の音」を聴きたがり、「声」を知りたがる老婦人とのやり取りが続き、別居中の夫との仲を紡ぎ直すというストーリーで、よくまとまっている。「言葉をやりとりすってことは、お互いを温かめあうことに似ている」というセリフがとても気に入った。ただ小説としては、もう少しうねりと仕掛けがほしかった。やはりこの人は詩人なんだなあと思った。「生の声」が人生のアクセントとして、とても大切なんだと改めて思った。

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